○全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例

令和5年3月13日

佐賀県条例第11号

全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例をここに公布する。

全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例

佐賀県は慈しみ合う県である。

佐賀の先人であり、日本赤十字社を創設した佐野常民は、「博愛これを仁という。仁とは人を慈しむこと」の言葉を残している。人の痛みに敏感になり、苦しみの中にいる人には手を差し伸べ、寄り添い、慈しみ合う精神は、時代を超えて脈々と佐賀県民の心に受け継がれてきた。この精神はこれからも将来にわたって大切に引き継いでいかなければならない。

私たちの社会は様々な年齢、国籍、性別の人、障害のある人ない人も、いろいろな人たちがいろいろな思いで共存している。

佐賀県では、県民みんながお互いを認め合い、支え合う佐賀らしいやさしさのカタチ「さがすたいる」を広める取組を進めている。

佐賀県は慈しみ合う県であるという土台の下で、「さがすたいる」の取組をさらに進め、県民みんなが支え合いながら暮らせる社会を目指していく。

他方で、情報化等の進展に伴って、部落差別(同和問題)をはじめとする不当な差別など人権に関する問題は複雑多様化している。特にインターネットの普及によって、不当な差別やいじめ、プライバシーの侵害、誹謗ひぼう中傷等が増加し、それらの問題への対応が大きな課題となっている。

佐賀県においても、インターネットを利用した誹謗中傷や差別を助長する投稿をはじめ、学校や職場でのいじめ、パートナーへの暴力や児童への虐待など、「人権」に関わる問題が依然として発生している。どれも決して他人事ではない。その解決のためには、県民一人一人が問題を自分のこととして考え、自ら行動していくことが大切である。

私たちは、人として生きていくための何人も侵すことのできない権利である「人権」を生まれながらに享有している。全ての県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進めるために、たゆまぬ努力を続けていくことを決意し、ここにこの条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、全ての県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくり(以下「人権が尊重される社会づくり」という。)を進めるにあたっての県、市町、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項等を定めることにより、部落差別(同和問題)及び女性、子ども、高齢者、障害者等の人権に関する問題の解消を図り、もって人権が尊重される社会づくりの推進に寄与することを目的とする。

(県の責務)

第2条 県は、前条の目的を達成するため、国、市町、関係機関等と連携協力し、行政のあらゆる分野において、教育及び啓発をはじめとした人権が尊重される社会づくりを進めるための施策(以下「人権施策」という。)を実施するものとする。

(市町の責務)

第3条 市町は、第1条の目的を達成するため、県と連携協力し、行政のあらゆる分野において、人権施策の実施に努めるものとする。

(県民の責務)

第4条 県民は、自らが、人権が尊重される社会づくりの担い手であることを認識し、人権意識の高揚に努めるとともに、相互に人権を尊重しなければならない。

2 県民は、人権が尊重される社会づくりを進めるため、県が実施する人権施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、自らが、人権が尊重される社会づくりの担い手であることを認識し、人権意識の高揚に努めるとともに、従業員その他の関係者の人権を尊重しなければならない。

2 事業者は、人権が尊重される社会づくりを進めるため、従業員の人権意識の高揚を図る等、その事業活動において、人権尊重の視点に立って取り組むとともに、県が実施する人権施策に協力するよう努めるものとする。

(基本方針)

第6条 知事は、人権施策を実施するための基本方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めるものとする。

2 知事は、基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、第14条第1項の佐賀県人権施策推進審議会の意見を聴くものとする。

3 知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

4 前2項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(人権侵害行為の禁止等)

第7条 何人も、不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。以下「人権侵害行為」という。)をしてはならない。

2 県は、人権侵害行為を防止するため、人権に関する正しい知識の普及をはじめとした教育及び啓発を積極的に行うものとする。

3 県は、人権侵害行為を受けた者に対して、次条の規定による相談対応その他必要な支援を行うものとする。

(相談体制)

第8条 県は、人権侵害行為を受けた者、その家族その他関係者の人権に関する問題についての相談体制を整備し、次に掲げる事項を行うものとする。

(1) 相談者への助言

(2) 相談内容に応じた必要な情報の提供及び関係機関の紹介

(3) 前2号に掲げるもののほか、相談対応として必要な支援

(助言、説示及びあっせん)

第9条 知事は、人権侵害行為を受けた者、その家族その他関係者から、人権侵害行為に係る事案を解決するために必要な助言、説示又はあっせんを行うべき旨の申出があった場合に、必要があると認めるときは、人権侵害行為をしたと認められる者及びその者を指導し、又は監督する者その他の関係者(以下「対象者」という。)に対して、当該人権侵害行為に係る事案を解決するための助言、説示又はあっせんを行うことができる。

2 知事は、当該人権侵害行為に係る事案の事実関係を確認するために必要な限度において、対象者に対し、説明又は必要な資料の提出を求めることができる。この場合において、対象者は、これに協力するよう努めるものとする。

3 知事は、第1項の助言、説示又はあっせんを行うに当たり、必要があると認めるときは、第14条第1項の佐賀県人権施策推進審議会の意見を聴くものとする。

4 知事は、あっせんによっては人権侵害行為に係る事案の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。

(勧告)

第10条 知事は、前条第1項の助言、説示又はあっせんを行った場合において、対象者が、正当な理由なく当該助言、説示又はあっせんに従わないときは、対象者に対して必要な措置をとるよう勧告することができる。

(意見の聴取)

第11条 知事は、前条の規定による勧告をする場合には、勧告の対象となる者又はその代理人(以下この条において「勧告対象者等」という。)の出頭を求め、意見の聴取を行わなければならない。この場合において、知事は、勧告対象者等に対して、あらかじめ、意見の聴取の期日及び場所、人権侵害行為に係る事案の内容並びに当該期日への出頭に代えて陳述書、証拠書類等を提出することができることを示さなければならない。

2 勧告対象者等は、前項の出頭に代えて、知事に対し、同項の規定により示された期日までに陳述書、証拠書類等を提出することができる。

3 知事は、勧告対象者等が正当な理由なく第1項の出頭をせず、かつ、前項の規定による陳述書、証拠書類等の提出をしないときは、第1項の規定にかかわらず、意見の聴取を行わないで勧告することができる。

(勧告の状況の公表)

第12条 知事は、第10条の規定による勧告を行った場合において、人権侵害行為の発生の防止及び解消のため、当該事案の概要(対象者が特定される事項を除く。)を公表するものとする。ただし、特別の事情があるときは、公表しないことができる。

(インターネット上の誹謗中傷等の防止)

第13条 県は、インターネットを利用して情報を発信する者の表現の自由を不当に侵害しないように留意しつつ、次の各号に掲げることに取り組むものとする。

(1) インターネット上の誹謗中傷等(インターネットを利用して、プライバシーの侵害に該当する情報、誹謗中傷に該当する情報その他の他人の権利利益を侵害する情報又は人権侵害行為を助長し、若しくは誘発する情報(以下「人権侵害情報等」という。)を発信することをいう。次号において同じ。)を防止するために必要な教育及び啓発に関すること。

(2) 県民に関し、又は県民によりインターネット上の誹謗中傷等が行われた場合であって、人権侵害情報等の送信を防止する措置を講ずる権限を有する者等に対して県が人権侵害情報等の削除を要請することが必要と認められるときに、当該人権侵害情報等の削除に向けた必要な措置を講ずること。

(佐賀県人権施策推進審議会)

第14条 知事の諮問に応じ、人権施策の推進に関する重要事項について調査審議させるため、佐賀県人権施策推進審議会(以下「審議会」という。)を設置する。

2 審議会は、委員22人以内で組織する。

3 委員は、人権に関する識見を有する者のうちから、知事が任命する。

4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 委員は、再任されることができる。

6 審議会に会長を置き、委員の互選によってこれを定める。

7 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。

8 会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。

(会議)

第15条 審議会は、会長が招集し、会長がその会議の議長となる。

2 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。

3 審議会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

(佐賀県人権施策推進審議会の調整委員会)

第16条 第9条第3項の規定による諮問に応じて人権侵害行為に係る事案について調査審議を行わせるため、審議会に調整委員会を設置する。

2 調整委員会は、調整委員5人以内で組織する。

3 調整委員は、審議会の委員で、人権侵害行為に関する事項について専門的な知識経験を有するもののうちから、会長が指名する。

4 調整委員会に調整委員長を置き、調整委員会に属する委員の互選によってこれを定める。

5 前条の規定は、調整委員会に準用する。この場合において、「審議会」とあるのは「調整委員会」と、「会長」とあるのは「調整委員長」と、「委員」とあるのは「調整委員」と読み替えるものとする。

6 審議会は、その定めるところにより、調整委員会の決議をもって審議会の決議とすることができる。

7 調整委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

(補則)

第17条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(佐賀県人権の尊重に関する条例の廃止)

2 佐賀県人権の尊重に関する条例(平成10年佐賀県条例第11号)は、廃止する。

(経過措置)

3 この条例の施行の際現に佐賀県人権の尊重に関する条例第5条第1項の規定により策定されている人権の尊重に係る教育及び啓発に関する施策を実施するための基本方針は、第6条第1項に規定する基本方針とみなす。

全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例

令和5年3月13日 条例第11号

(令和5年3月13日施行)