○佐賀県がんを生きる社会づくり条例

平成26年3月20日

佐賀県条例第37号

佐賀県がんを生きる社会づくり条例をここに公布する。

佐賀県がんを生きる社会づくり条例

(目的)

第1条 この条例は、県民の疾病による死亡の最大の原因ががんであり、がんが県民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、県民ががんを知りがんと向き合って生きる社会の実現を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、県民、県、市町、医療機関及び保健医療従事者(がんの予防及び早期発見を推進し、又は科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)に従事する者をいう。以下同じ。)、医療保険者(介護保険法(平成9年法律第123号)第7条第7項に規定する医療保険者をいう。以下同じ。)並びに事業者(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第2条第3号に規定する事業者をいう。以下同じ。)の責務を明らかにするとともに、がんの予防、早期発見及び質の高い医療の提供の推進、働く世代のがん対策の充実等がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(基本理念)

第2条 がん対策は、県民のがんの予防及び早期発見に向けた自発的かつ主体的な取組を促進しつつ、がん患者を含む県民(以下「県民」という。)の立場に立って推進されなければならない。

2 がん対策は、県民、県、市町、医療機関及び保健医療従事者、医療保険者並びに事業者の適切な役割分担の下に連携して推進されなければならない。

(県民の責務)

第3条 県民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うとともに、積極的にがん検診を受けるよう努めるものとする。

(県の責務)

第4条 県は、国、市町、医療機関及び保健医療従事者、医療保険者、事業者並びにがん患者及びその家族により組織される患者団体その他の関係団体(以下「関係団体」という。)と連携を図りつつ、本県の特性に応じたがん対策に関する施策を策定し、実施するものとする。

(市町の責務)

第5条 市町は、県、医療機関及び保健医療従事者、医療保険者、事業者並びに関係団体と連携し、がんの予防及び早期発見に関する施策の推進に努めるものとする。

(医療機関及び保健医療従事者の責務)

第6条 医療機関及び保健医療従事者は、がん患者に対して良質かつ適切ながん医療を提供するとともに、県及び市町が講ずるがん対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(医療保険者の責務)

第7条 医療保険者は、加入者ががんを予防し、及び早期に発見することができる環境の整備に努めるものとする。

2 医療保険者は、県及び市町が講ずるがん対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第8条 事業者は、次の各号に掲げる環境の整備に努めるものとする。

(1) 従業員ががんを予防し、及び早期に発見することができる環境

(2) 従業員又はその家族ががん患者となった場合であっても働きながら治療を受け、療養し、看護し、又は介護することができる環境

2 事業者は、県及び市町が講ずるがん対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(がんの予防の推進)

第9条 県は、がんの予防に資するため、市町、医療機関及び保健医療従事者、医療保険者、事業者並びに関係団体と連携し、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等を踏まえたがんの予防の推進のために必要な施策

(2) がんの予防効果のあるワクチンの接種その他のがんの予防の推進のために必要な施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、がんの予防の推進のために必要な施策

(早期発見の推進)

第10条 県は、がんの早期発見に資するため、市町、医療保険者、事業者、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、次に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) がん検診の受診率を向上させるために必要な施策

(2) がん検診の質の向上のために必要な施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、がんの早期発見のために必要な施策

2 市町は、住民ががん検診を受診するよう必要な施策を実施するものとする。

3 医療保険者は、加入者が受診できるがん検診を実施し、又は市町が実施するがん検診を受診できるよう必要な施策を実施するものとする。

4 事業者は、その雇用する従業員ががん検診を受診するよう必要な施策を実施するものとする。

(がん医療の充実)

第11条 県は、がん患者が、がんの状態に応じた適切ながん医療を受けることができるようにするとともに、質の高いがん医療を提供するため、専門的ながん医療を提供する医療機関その他の医療機関等及び保健医療従事者と連携し、次の各号に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) がん診療連携拠点病院(専門的ながん医療の提供等を行う医療機関として、厚生労働大臣が指定する病院をいう。次号において同じ。)の機能強化

(2) がん診療連携拠点病院相互間並びにがん診療連携拠点病院及びその他の医療機関等との連携及び協力の推進のために必要な施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、県内におけるがん医療の向上のために必要な施策

(がん先進医療の普及促進)

第12条 県は、がんの治療方法等の選択の機会を拡大し、がん医療の充実を図るため、重粒子線治療その他のがん先進医療(健康保険法(大正11年法律第70号)第63条第2項第3号に規定する評価療養のうち、先進医療として厚生労働大臣が定めるものであって、がんの治療に用いられるものをいう。)の普及の促進のために必要な施策を講ずるものとする。

(緩和ケアの充実)

第13条 県は、がん患者の身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安の軽減を目的とする緩和ケアの充実を図るため、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

(在宅医療の推進)

第14条 県は、がん患者の意向を踏まえ住み慣れた地域等でがん医療を受けることができるようにするため、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

(働く世代に対するがん対策の充実)

第15条 県は、働く世代のがん死亡者を減少させるため、市町、医療機関及び保健医療従事者、医療保険者、事業者並びに関係団体と連携し、次の各号に掲げる施策を講ずるものとする。

(1) 職域におけるがん検診の受診率を向上させるために必要な施策

(2) 職域におけるがん検診の質の向上のために必要な施策

(3) 職域において、次に掲げる環境が整備されるようにするために必要な施策

 従業員ががんを予防し、及び早期に発見することができる環境

 従業員又はその家族ががん患者となった場合であっても働きながら治療を受け、療養し、看護し、又は介護することができる環境

(肝炎肝がん対策の推進)

第16条 県は、市町、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、本県特有の課題である肝炎肝がん対策を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

(小児がん対策の推進)

第17条 県は、市町、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、小児がん対策を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

(女性特有のがん対策の推進)

第18条 県は、市町、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、女性特有のがん対策を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

(がん研究の推進)

第19条 県は、小児がん、希少がん、難治性がんその他のがんの本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他の先進的ながん医療の導入に向けた研究について情報収集するとともに、その研究を促進するため必要な施策を講ずるものとする。

(がん登録の推進)

第20条 県は、科学的知見に基づくがん対策の推進に資するため、がん登録(県内及びがん医療の提供を行う医療機関内において、がんの罹患、診療、転帰等に関する情報を記録し、及び保存することをいう。)が適切かつ着実に実施されるために必要な施策を講ずるものとする。

(保健医療従事者の育成及び確保)

第21条 県は、手術、放射線療法、化学療法その他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する保健医療従事者の育成及び確保を図るため、医療機関及び関係団体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

(骨髄移植等の推進)

第22条 県は、白血病等の血液がんに対し有効な治療法である骨髄移植等を推進するため、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携して、骨髄バンクのドナー登録(骨髄移植のための骨髄又は末しょう血幹細胞移植のための末しょう血幹細胞の提供希望者として登録することをいう。)が促進されるために必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療に関する情報の提供)

第23条 県は、県民ががん医療に関する正確な情報を容易に入手することができるようにするため、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

(がん患者及びその家族等に対する支援)

第24条 県は、がん患者及びその家族等の療養生活の質の維持向上及び精神的な苦痛又は社会生活上の不安その他の負担の軽減のため、医療機関及び保健医療従事者並びに関係団体と連携し、必要な施策を講ずるものとする。

(がんに関する教育の推進)

第25条 県は、市町と連携し、がんに関する知識及びがんの予防につながる望ましい生活習慣を身に付けられるよう学校における健康教育の充実に努めるものとする。

(財政上の措置等)

第26条 県は、がん対策に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

佐賀県がんを生きる社会づくり条例

平成26年3月20日 条例第37号

(平成26年3月20日施行)