○さがの食と農を盛んにする県民条例
平成17年3月24日
佐賀県条例第52号
さがの食と農を盛んにする県民条例をここに公布する。
さがの食と農を盛んにする県民条例
農業は、生活に必要不可欠な食料を生産し、私たちの生命を育むとともに、土と水を守ってきた。
農村は、緑豊かな自然環境のもとで、地域の伝統及び文化を継承し、人間性豊かな暮らしを育むとともに、休養や教養の場を提供し、地域社会の活性化に貢献するなど、重要な役割を果たしてきた。
私たちのふるさと佐賀は、北に玄界灘、南に有明海という2つの異なる海を持ち、また、豊かな緑と美しい棚田を抱えた脊振山系や多良岳山系などの中山間地とクリークが縦横に走る肥よくな佐賀平野の平坦地を併せ持つ豊かな自然を生かして、農業の盛んな県として発展してきた。
私たちは、生命と暮らしの根幹である「食と環境」を支える農業及び農村を県民の貴重な財産として、次の世代に引き継いでいかなければならない。
しかしながら、近い将来に、世界の食料需給がひっ迫することが懸念される中で、輸入農産物の増加や食料消費の変化、農業就業者の減少や高齢化、耕作放棄地の増加など、農業及び農村を取り巻く状況が大きく変化している。
このため、将来の農業経営や日々の安全な食料の確保が危惧されている。
そこで、県民の貴重な財産である本県の農業及び農村の魅力と活力を再構築するために、国づくり、地域づくりを支えているのは農業及び農村であり、食の安全と環境を守り、地域おこし、地域の活性化のためには農業及び農村を大切にしていかなければならないことを、県民1人ひとりの基本認識として、農業及び農村を振興していくことが重要である。
このようなことから、本県における農業及び農村の振興に関して、県、市町、農業者、農業関係団体及び地域住民が果たすべき役割や方策を明らかにするために、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、本県における農業及び農村の振興に関する目標を明らかにするとともに、目標達成に向けた推進方策を示し、農業及び農村並びに食に対する県民の理解を深め、農業及び農村の振興を図ることを目的とする。
(農業及び農村振興の目標)
第2条 県は、次に掲げる目標のもとで農業及び農村の振興を図るものとする。
(1) 県民に安全で安心な食料が安定的に供給されるとともに、食の重要性について県民の理解が深められること。
(2) 次世代の農業者を育成しつつ、環境に十分配慮しながら、自立したゆとりある農業経営が将来にわたり持続的に営まれること。
(3) 農村に住む人が快適に生活できる環境を整えるとともに、県民をはじめ国民へのやすらぎ空間の提供、文化の継承、水源のかん養、景観の保全等、農業及び農村の有する多面的機能が将来にわたって十分に発揮されること。
(県の責務)
第3条 県は、農業及び農村の振興に向け、国、市町、農業者及び農業関係団体並びに消費者等と連携を図り、農業及び農村に関する施策を総合的に推進する責務を有する。
2 県は、市町が農業及び農村の振興に関する施策を策定し、又は実施しようとするときは、情報の提供、助言等必要な支援を行うものとする。
3 県は、国に対して農業及び農村の振興に関する施策の提言を積極的に行うものとする。
(平17条例74・一部改正)
(市町の役割)
第4条 市町は、それぞれの自然的社会的条件に応じて、県、農業者、農業関係団体等と協力しながら、農業及び農村の振興を積極的に図るよう努めるものとする。
(平17条例74・一部改正)
(農業者及び農業関係団体等の役割)
第5条 農業者及び農業関係団体は、自立的な農業経営の展開及び消費者に信頼される安全・安心な農産物の生産を行うこと等により、農業及び農村の振興に自ら積極的に取り組むよう努めるものとする。
2 食品関連事業者等は、県産農産物の利用を推進すること等により、農業及び農村の振興に協力するよう努めるものとする。
(県民の役割)
第6条 県民は、食生活の重要性を認識し、農業及び農村の果たす役割に対する理解を深めるとともに、県産農産物の消費及び利用を進めること等により、農業及び農村の振興に協力するよう努めるものとする。
(食料消費に関する施策の充実)
第7条 県は、県民が安心して食料を消費できるように、食品表示の適正化、栽培方法に関する認証制度の普及その他必要な施策を講ずることにより、食料の安全性の確保及び品質の改善が図られるよう努めるものとする。
(地産地消の推進)
第8条 県は、県民が県産農産物への理解を深めるとともに、良質で安全な県産農産物を適正な価格で消費できるよう、県産農産物の生産及び流通体制の整備を図り、地産地消の推進に努めるものとする。
(競争力のある農産物づくり)
第9条 県は、地域の特色を生かした高品質で競争力のある農産物づくりのため、生産性の向上、消費動向に対応した生産の推進等に努めるものとする。
(農業技術の向上)
第10条 県は、農業技術の向上を図るため、国、大学、民間等との共同研究、営農現場と連携した試験研究等を行うことにより、県独自の新技術・新品種の開発と普及に努めるものとする。
(農業及び農村の情報化の推進)
第11条 県は、効率的かつ安定的な農業経営を支援するため、農業者が情報通信技術を積極的に利用できる環境の整備に努めるものとする。
(農産物の付加価値向上のための他業種との連携等)
第12条 県は、農産物の付加価値を高める農産物加工等を推進するため、農業と他業種との連携等による地域における農業を核とした新たな産業の創出及び総合産業化(生産から加工、流通、販売までにわたり農業経営を総合的に展開していくことをいう。)が図られるよう努めるものとする。
(環境と調和した農業の推進)
第13条 県は、環境と調和し、持続的に発展する農業を確立するため、減農薬栽培、減化学肥料栽培及び有機栽培による農法等を推進し、農業の自然循環機能の維持増進が図られるよう努めるものとする。
(観光業等に関する団体との連携)
第14条 県は、農業及び農村に関する施策を効果的に推進するため、観光業、商工業等に関する団体との連携に努めるものとする。
(農業の担い手の確保等)
第15条 県は、意欲ある農業の担い手の確保及び効率的かつ安定的な農業経営体の育成を図るため、農業者の農業技術及び経営管理能力の向上、新たに就農しようとする者の農業技術及び経営方法の習得の促進等に努めるものとする。
(地域営農の推進)
第16条 県は、地域における営農の維持及び発展を図るため、集落等を基礎とした農業者の組織その他の農業生産活動を共同で行う農業者の組織、委託を受けて農作業を行う組織等の活動の促進に努めるものとする。
(男女共同参画の促進)
第17条 県は、女性の農業経営における役割を適正に評価するとともに、男女が農業経営及びこれに関連する活動に共同して参画できる環境の整備に努めるものとする。
(高齢農業者の活動の促進)
第18条 県は、地域の農業において、高齢農業者が長年の経験により培ってきた知識及び技術を生かして、生きがいを持って農業に関する活動を行うことができる環境の整備に努めるものとする。
(生産基盤の整備等)
第19条 県は、農地及び農業用水を確保し、農業生産性の向上を図るため、生産基盤の整備、農地の利用の集積及び農地の効率的な利用の促進に努めるものとする。
(土地改良施設の適正な維持・管理)
第20条 県は、農業生産の安定を図るため、農業用用排水施設等土地改良施設の維持・管理が適正に行われ、その機能が十分発揮されるよう努めるものとする。
(クリークの整備等による県土の保全)
第21条 県は、県土を保全し、農業生産の安定を図るため、クリーク、ため池、海岸等の整備及び地盤沈下対策の推進に努めるものとする。
(農村環境の整備等)
第22条 県は、美しく豊かな農村の環境を保全し、農村の住民が農村における生活の豊かさを享受できるように、自然環境等に配慮しながら、生活環境の整備等を推進するとともに、農村の伝統及び文化が継承されるよう努めるものとする。
(中山間地域等の振興)
第23条 県は、中山間地域等(山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域をいう。)の総合的振興を図るため、地域の特性を生かした農産物の生産、販売等を通じた農業その他の産業の振興に努めるとともに、当該地域において、農業及び農村の有する多面的機能が確保され、適切な農業生産活動が継続的に行われるよう、生産基盤及び生活環境の整備等に努めるものとする。
(都市と農村の交流の推進)
第24条 県は、農業及び農村の果たす役割に対する理解と関心を深めるため、地域資源等を活用した都市住民との交流の推進、農産物の都市住民への直売等に対する支援、情報の発信等に努めるものとする。
(県民の理解の促進)
第25条 県は、食に対する正しい知識並びに農業及び農村の果たす役割に対する県民の理解と関心を深めるため、食及び農に関する教育の推進等に努めるものとする。
(財政上の措置)
第26条 県は、農業及び農村に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(基本計画の策定)
第27条 知事は、農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本計画を策定しなければならない。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 県内農産物の生産目標、農地の有効利用その他農業及び農村の振興に関する主要な目標
(2) 前号の目標の達成のための主要な施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、農業及び農村の振興のために心要な事項
3 知事は、基本計画の策定に当たっては、あらかじめ、佐賀県農政審議会及び県民の意見を聴くなど、県民意見の反映に努めるものとする。
4 知事は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを議会に報告するとともに、公表しなければならない。
5 知事は、農業及び農村をめぐる情勢の変化等を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画を見直すものとする。
(事業の実施状況等の報告)
第28条 知事は、基本計画に基づく事業の実施状況等を、毎年度、議会に報告するとともに、公表するものとする。
附則
この条例は、平成17年4月1日から施行する。
附則(平成17年条例第74号)
この条例中第8条、第10条、第13条、第18条、第21条、第23条、第24条、第37条、第41条、第43条、第45条、第48条、第54条、第64条及び第67条の規定は平成18年1月1日から、第15条、第26条、第38条、第63条及び第65条の規定は平成18年3月1日から、その他の規定は平成18年3月20日から施行する。